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腰掛 2

「色良いお返事を頂けますように」と言いおき村長は帰っていった。
順之助は直ぐに離れに 花、トメ、番頭の吉三も呼びよせた。
「えらいことになった。縁談は綾乃にきたんじゃ」

「吉さん、あんたどう思う?」吉三は「垣ノ内様でしたら お家柄も良く、山林も内よりは上ですな、本人も上の学校も出られて申し分なしです」

う~むと考え込む順之助。

トメが「この縁談は絶対に逃してはならん」続けて「菊乃を何処かへ腰掛に出すのは どうか?」と真剣だった。

そんな酷いことを…」と花は泣声になる。

当時(明治後期)でも腰掛婚と言う昔の風習の名残があった。
一旦嫁に出して暫くして引き取る。

吉三は身を乗り出して「お奥様の仰るのはご尤もで。私に良い考えがあります。端村の西沢賢一は実直で良い男じゃ。そこの息子、定夫君なら うまくいくと思う。賢一には内の山守りもさせいるし丁度いい。ちょっとマシな山を持たせて出して、侘びの印にその山を置いて帰って来ればいい」

才長けた吉三の案に順之助も「やむをえん」と苦い決断をした。
花も押し切られてしまった。

菊乃への言い聞かせはトメがあたった。

「今回、垣ノ内家からの縁談はお前に来たのじゃ、だがの、お前との相性は大凶で不幸が目に見えている。で、綾乃を行かせることにした。世間体が悪いからの、菊乃は一旦お嫁入りして直ぐに戻っておいで。迎えを行かすから急に逃げて来るんですよ。先方へは絶対に悟られてはいかん」と口止めもした。

菊乃は お婆さまの言うことに「はい」と素直に従った。

番頭の吉三は 早速 西沢賢一の元へ「武田家の菊乃さまへ縁談を申し込むように」と定夫の上司の男を差し向けた。

「ご大家のお嬢様をとんでもない」と尻込みする賢一に「武田の旦那様が定夫君を大そう褒めておらっしゃった。大丈夫じゃ、わしに任さんかい」と言葉巧みに纏めた。

賢一も自慢の息子を褒められて話に乗ってしまった。  

                          つづく


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# by bhakiiko | 2007-12-04 11:43 | エッセー

腰掛

武田順之助と花夫婦には二人の娘と一人の息子が居る。
姉菊乃は二十一歳。妹綾乃は十九歳。息子は十二歳。

姉の菊乃は小学生の頃から勉強が好きで良くできた。
丸顔の可愛い小柄な娘。
妹綾乃の方は母親の花に似てすらっとした色白の美人。

姉の菊乃には 幾つかの縁談が有ったが資産家で満足する所からは未だ来ていない。

シッカリ者の祖母トメは「娘は売りものじゃさかの、着る物を始末(節約)しないで、着飾って、家柄の良いところへ嫁がせねばならん」と言う。

順之助は村の役を沢山引き受けて来客も多く忙しい。
山林などの采配は番頭の吉三に任せている。

ある日 隣村の村長が三つ揃いの背広姿でやって来た。

「今日は縁談を頼まれて参りました。わしの昵懇にしている垣ノ内様の
御子息です」と畏まる。垣ノ内家は名の知れた資産家。
「ほう」と言いつつ順之助は良い縁談にほくそ笑んだ。
「それで 御子息は お幾つにお成りで?」
「二十五歳で体格も良くてご立派でございますよ」
「二十五歳でしたら内の菊乃よりは四歳上ですな~」

村長は苦渋に満ちた表情で「誠に申し上げ難いのですが お妹さまの
綾乃さまの方を頼まれました」

順之助は エッと言葉が飛び出すほど吃驚した。
だが威厳を保って「ほう、綾乃の方ですか」と大様に答えた。
                     
                         つづく

# by bhakiiko | 2007-12-01 15:24

鼻薬

近くまで来たからと知人のTさんが寄ってくれた。

八十二才になったと言う。「お達者でいいですね」との問いに「わしゃのー先頃から股間のところが痒ゆうて痒ゆうてのー、これは きっと“インキン タムシわしゃ食わん”と言うやっちゃなーと思ってのー」

インキン タムシは解るが、「わしゃ食わん」とは「私は嫌い」の意味なのだろうか。どーってことない、追究しなくてもいい。

このお方 TさんはS町に住んで居る。昔から卑猥な話が得意な御仁である。聴くのすら恥ずかしい。S町の街風なのかもしれないが。

「ほう」と聴く。「アンタさんも知っているじゃろ?町医者のK皮膚科、あそこは良く治ると評判じゃ」つまりその医者へ息子に連れてもらって行ってきた。
評判通りえらい混雑で七時から十一時半までも待たされた。診察の結果 やっぱりインキンタムシだった。Tさんは血圧も高いし、心臓も胃腸も弱い。だから強い飲み薬は使えない。「塗り薬で様子をみましょう」と言うわれた。

次回も又、四時間、五時間待たされるのは大変だ。

そこで考えた。医者に鼻薬ちゅやつをイッチョ嗅がせて見ようと。

早速デパートからウイスキーを送り届けてもらう。

次にも七時に病院へ到着。すでに十五人ほど待っていた。

診察券を入れて待つ。八時に受付のカーテンが開く。九時から診察。
九時に「T様」と看護婦が呼ぶ。Tと言う名前は山ほど有る。見渡しても誰も立つ気配が無い。と、「T様!T 〇雄様!」

ありゃ!わしのこっちゃ。慌てて診察室に入って行く。
先生はニコニコ顔で迎えてくれて「ええ物贈ってくれて有難う」だとよ。
診察、薬を塗ってもらってあっという間に終わり。

鼻薬は効いた~~早いのなんの。効め抜群!きしょこ(気持ち)良かった。

鼻薬を嗅いだからとて診立てが正確で病気が治ればそれは名医なんだ。

「受け取れません」と突き返す医者でも腕が冴えなきゃ、やぶ医者だ。

「あれは名医だ!確かに名医だ」と自分で言って 自分で頷いていた。

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# by bhakiiko | 2007-11-30 21:14

赤い餅・白い餅

「お祭り」と言う回覧板が回ってきていたがコロリと忘れていた。
表が騒々しいので出てみて あぁ そうだ!今日はお祭りだったと気付く。

鉾が街を練り歩き 人々が祭り半纏をはおりゾロゾロと後に付いて歩く。

要所 要所で鉾が止まって餅蒔き(餅ほり)をする。子供達でもビニール袋を提げて沢山拾う。

近所の奥さんが「お宮さんで午後も餅蒔きが有るから行きましょう」と誘って下さった。

昔 和歌山に住んで居た頃 餅まきには怖い経験がある。神社の餅まきに行き前に屈んで餅を拾っていた。と・・・顔面にでっかい物体がぶつかってきて一瞬 目からエスカルゴが飛び出した!。しばし意識朦朧。前屈みで踏ん張っていた。何とその物体は体重が100キロちかくもあろうかと思われる顔見知りの奥さんのお尻だった。その時運悪く後ろにひっくり返っていたならばキット胸の上のドッ~カン!と肉塊が落ちて、肋骨が2,3本折れたかもしれない。

あまりの痛さに集団から這うように離れ 杉の木にもたれて我慢した事がある。
そのあとも餅はばんばん投げられる。その巨尻の持ち主さんは尻餅をついたが私の顔面で受け止めてもらって無傷でキャーキャー餅拾いに夢中だった。


餅拾いとは何年振りだろうか。嫌な事は忘れなきゃと連れてもらうことにした。

烏止野神社には日本神話の八咫烏(ヤタガラス、三本足の“やた烏”は太陽をあらわし、信仰の対象)を染め抜いた幟が立っている。

皆さんの真似をしてお宮の境内へ座り込み。目の前へ餅が飛んでくる。
興奮してキャーキャー叫んでしまう。

脳から右手へ指令を下す。目の前のお餅を「拾え!」と。だが他人の手が伸びてきて素早くキャッチされてしまう。「ア、ララ」次のこっちも「ア、レレ」殆ど取られてしまう。やっと3個ゲット。アップ~~。

しょうがないや、年が寄ると鈍くなるんだわ~~と、独り言。

ところが 近所のおばあさん連中(80歳~90歳)がビニール袋に一杯拾っている。

「アレッ、奥さん たったそれだけ?」「ハイ」「まあ~可哀想に!どれどれ」と言って皆さん沢山摘んで私の袋へ入れて下さった。

赤い餅、白い餅 嬉しいな~~ 

その夜はゼンザイを炊いて友人を呼び善哉パーティとしゃれ込んだ。

友人にはぜ~~ぶ自分で拾ったことにしておいた。

# by bhakiiko | 2007-11-28 08:05

借金

ある所の ある御仁は 今わの際に片手を広げて振った。

家族は どこかに きっと5万円隠して有るんだと思った。

50万円か? 500万円かも。

家中探し回った。無い。

やがて満中陰の法要が済んだ。

翌日 隣のおばあさんから「5万円貸してある。」と 取りにきた。

もし、もしも 10万円借金が有るならば両手を振れば良い。

15万円なら両手と片足。バランスが悪い。

20万円なら両手両足。忙しくって終われない
# by bhakiiko | 2007-11-20 16:32


日々 愉快に~


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